女性の働きやすさは企業価値のバロメーター ~離職率が低い職場環境を考える~
目次
スケジュール管理、脱Excel、ペーパーレス等職場の課題をオールインワンで解決
「働き方改革」が進められる中で、女性の活躍推進は大きなテーマの1つです。男女雇用機会均等法が施行されてからは30年以上たち、女性が働く環境は徐々に整備されてきましたが、そんな現在でも出産、育児といったライフイベントをきっかけに離職する人はまだまだ多く、女性が働き続けられる環境が十分に整えられているとは言えません。
今回は、女性の離職率の現状と、企業に必要な取り組みについて、経営コンサルタントの小笠原隆夫さんに紹介いただきました。
女性の主な離職理由は?
いくつかの調査結果から、女性が働く環境の現状や、就業に関する意識を見てみましょう。
女性にとっては相変わらず大きな理由の「結婚・出産・育児」
内閣府から発表された「男女共同参画白書(2017年版)」によれば、子育て期の25~44歳の女性の就業率は、1986年の57.1%から2016年で72.7%へと上昇しており、表面的には女性が仕事と育児を両立できる環境作りが進んでいるように見えますが、実態は必ずしもそうとは言えません。
労働政策研究・研修機構が2019年3月に発表した調査(若年者の離職状況と離職後のキャリア形成)によれば、「“初めての正社員勤務先”を離職した理由」として、女性では「結婚・出産のため」との回答が33.0%と、「肉体的・精神的に健康を損ねたため」の27.3%、
「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」の27.1%を抑えて、突出したトップとなっています。
男性で同じ理由の回答はわずか3.6%ですから、結婚、出産、育児が、特に女性の就業においては今でも大きな壁となっていることがわかります。
また、同じ調査の中で、「結婚・出産・育児・介護を理由に辞めるように言われた」との回答が女性では4.3%あり、会社による女性の就業継続を妨げる行為が、少数とはいえ未だにおこなわれている様子が見られます。
働き続けたい気持ちは強い
国立社会保障・人口問題研究所がおこなった調査(第15回出生動向基本調査)によれば、末子の年令が3~5歳の間では、実に92.1%の女性が就業を希望しています。働き方にはいろいろ希望があると思いますが、働きたいという意識は非常に高いことが分かります。育児にかかわる女性たちの就業意識も変化してきています。
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調査だけでは見えない現場の様子
さらに、調査だけではなかなかわかりづらい、実際の現場での様子を見ていきましょう。
今でも多い育児支援への消極的な雰囲気
今は規模を問わず、すべての企業に育児休業ほかの支援が義務付けられていますが、制度としては導入されていても、具体的な取り組みに消極的な企業が、今でも多く存在します。
例えば、自身はあまり子育てに関わらなかったと思われる、中高年男性が経営の中核を担っている企業では、その世代の理解不足による冷ややかな対応から、職場での育児支援を受けづらい雰囲気となっているケースが見受けられます。
「女性はすぐに辞めてしまう」といって顔をしかめるような経営者は今でも多いですが、調査で見た通り、女性は働き続けたい意思を強く持っています。辞めさせてしまっている要因の多くが会社側にもあることを、理解する必要があるでしょう。
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女性が働きやすい環境をどう作るか
女性が働き続けるために、出産や育児に関する支援が不可欠であることは間違いありませんが、そのために、会社としてどのような対応をしていけばよいかを考えてみます。
育児支援を活性化する多様で柔軟な働き方
さまざまな企業の現場を見ていて、出産や育児による女性の離職が少ない企業に共通しているのは、働く時間と場所、さらに仕事内容に対する柔軟な対応です。子育てをしながら仕事をしていると、子どもの病気などで急に休まなければならなかったり、保育園のお迎え時間や学校からの帰宅時間など、働く上でのさまざまな制約があります。短時間勤務制度はありますが、時間的な制約条件は多岐に渡り、この柔軟な対応が望まれます。
さらに働く場所として、例えば在宅勤務などを活用すれば、すきま時間が有効活用でき、通勤や子どもの迎えなど、時間的制約の軽減にもつながります。
働く時間と場所への柔軟な配慮は、育児支援では強く望まれています。
職場復帰への心理的ハードルに配慮する取り組み
育児休業からの復職にあたって、仕事のブランクや職場の変化を不安に思う人がいます。これが心理的なハードルとなって復帰を断念する人や、実際に復職しても以前のように仕事がこなせないことで、結局離職してしまった人もいます。
これに対しては、育児休業中に会社の情報共有ができるSNSなどの環境を作ったり、メールなどで定期的に情報交換をしたりすることや、復職時にリハビリを兼ねた研修を一定期間実施するなど、休業中でも会社や仕事から隔離された状況を作らない工夫をしている会社があります。
育児中の支援だけでなく、スムーズに復帰できるような配慮も必要です。
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辞めない職場の条件はほとんどが男女共通
ここでは、先ほどの調査から、離職率が低い会社の条件を見てみましょう。
基本的な労働環境と人間関係の大切さ
前述の労働政策研究・研修機構の調査で、男女とも上位に入る離職理由を見ていくと、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「肉体的・精神的に健康を損ねた」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」「人間関係が良くなかった」などがあります。健康を損ねた理由には過重労働など職場環境の問題もあるはずで、やはり基本的な労働条件を整え、良い人間関係を構築するのは離職率低下の必須要件です。
また、現場で聞かれる声に、「手本になる上司がいない」「会社でのキャリアパスが見えない」というものがあります。仕事を通じた将来像を見せることも、意識的におこなっていく必要があるでしょう。
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働きやすさは企業価値につながる
ここまで見てきたように、女性の離職率を下げるには、出産・育児に対する支援が必須ですが、ただ制度を作るだけでなく、それが活用しやすい職場環境作りや現場の意識改革が必要です。
さらに、離職に至る理由には男女共通のものが数多くあります。つまり、女性の離職が少なく働きやすい職場は、男性にとっても働きやすいということです。
働きやすい企業には優秀な人材が集まり、その人材が定着して業績が上がり、企業価値は向上します。昨今の人手不足の環境の中で、女性の働きやすい環境作りは、企業価値を上げるために必要不可欠の取り組みなのです。
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執筆者プロフィール:
小笠原 隆夫
経営コンサルタント・人事労務コンサルタント・組織コンサルタント・採用コンサルタント
IT企業でエンジニア職、人事部門長として関連業務に携わる。
2007年より「ユニティ・サポート」代表として人事・組織
コンサルティングに従事。
著書に「リーダーは空気を作れ!」(アルファポリス)。
ほかウェブのコラム執筆多数。
WRITER
WORKSHIFT DESIGN 編集部
WORKSHIFT DESIGN(ワークシフトデザイン)編集部。 働き方を、シフトする。現場目線で新しい時代の働き方を考えるメディアとして【働き方改革】【リモートワーク/ワークスタイル】【残業削減】【業務効率化】をテーマに記事を執筆しています。