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マトリックス組織の特徴、そのメリットと成功のポイント

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2016年にトヨタ自動車が採用して注目を浴びたマトリックス組織。今やグローバル企業を中心に導入する企業が増えています。しかし、なぜ今マトリックス組織が注目されているのでしょうか。従来の組織形態との違いを比較しながらわかりやすく解説します。

はじめに:マトリックス組織とは

 

マトリックス組織とは、「職能別組織と製品別組織」「事業別組織と地域別組織」など2つの異なる組織構造をタテ軸とヨコ軸で格子状に組み合わせ、双方の機能や利点を同時に実現しようとする組織形態のことです。
現代のグローバル企業の成功モデルは、営業やサービスだけでなく、原材料の調達・商品管理・顧客サポートなどをグローバルに展開しながら、国・地域ごとに、その特性を踏まえたオペレーションや市場へのアプローチを行うといった”マトリックス・マネジメント”です。製品やサービスの責任者と国や地域などのマーケット責任者の2人のリーダーの指揮の下で、クロスファンクショナルに仕事が進められるというものです。
ビジネスの高度化・多様化に対応しつつ、複数の目標を同時に達成するための組織形態として、マトリックス組織は広く採用され、効果を上げています。

 


 
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マトリックス組織の歴史と特徴

 

そもそもマトリックス組織という概念は、1960年代にNASA(米国航空宇宙局)がアポロ計画を進める際、航空宇宙産業企業に導入を推奨したことから広まりました。当初はプロジェクト・マネジャー制と呼ばれていて、プロジェクトごとにマネジャーを配置し、機能別組織にプロジェクトチームが横串を通すように横断的に編成されました。プロジェクトだけの臨時的な組織編成という位置付けだったものが恒常化し、マトリックス組織として定着、普及していったのです。
(※1)

 

1980年代には、DEC(Digital Equipment Corporation:コンパックを経て、その後ヒューレット・パッカードに)の創設者Ken Olsenが、マトリックス・マネジメントを使って業績を大きく飛躍させ(※2)、これによりマトリックス組織という概念が一気に普及。GE・シティコープ・シェル石油・エクイタブル生命保険(現AXA)・ダウコーニングなど大手企業もこぞってマトリックス組織を採用するようになりました(私自身も1990年代に当時勤めていた米国企業においてマトリックス組織の中で働いています)。

 

日本では、2016年にトヨタ自動車がマトリックス組織を導入することを発表し、大きな反響を呼びました。トヨタの場合、縦軸として第1トヨタ・第2トヨタなど4つのビジネスユニットを設置し、そこに横軸として技術開発本部や生産管理本部・経理本部などを横断させています。つまり、これまで以上にローカル市場の動向の把握に力を入れ、販売戦略を地域に特化したものに強めていこうという方向性の現れと言えるでしょう。
マトリックス組織の特徴は、従来のピラミッド型組織の欠点を補完し、無駄な機能重複をなくして経営資源を有効に利用しようとするものです。環境の多様化に対応することが可能になるとともに、複数の目標を同時に追求できるようになります。
 
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機能型組織とプロジェクト型組織

 

マトリックス組織と別の組織形態として、機能型組織とプロジェクト型組織があります。

 

機能型組織は、一般企業の多くがとっている組織形態で、プロジェクト型組織は、システム開発会社などで多く見られる組織形態です。それでは、それぞれの特徴について見てみましょう。
機能型組織とは、組織のトップの下に、開発・製造・販売・人事などの機能別部門(職能部門)がぶら下がる形態の、伝統的な組織構造です。機能がそのまま部門となっているので、プロジェクトを推進する場合、それぞれの部門から人材を割り当てることになります。
メリットは部門内でのスキル向上や密なコミュニケーションがとりやすく、部門(部署)ごとに明確な上司(マネジャー)がいるので指揮命令系統が一貫し、統制がとりやすいというものです。
デメリットとしては、プロジェクトにおける担当責任が曖昧になりやすく、プロジェクト・マネジャーの権限が低くなり、人員調整・部門外との連携・情報共有・意思決定などに時間がかかってしまうことでしょう。セクショナリズムが起きやすいという問題もあります。つまり、「縦」が強く「横」が弱いわけです。

 

プロジェクト型組織とは、新規プロジェクトごとにチームを結成する形態の組織です。プロジェクトを担当する専門のチームがあり、各々のプロジェクトで独立して事業が推進されます。プロジェクト・マネジャーの権限が強く、プロジェクト内のマネジメントすべてに責任を持ちます。
メリットは、必要なスキルをもつ人材を各部署から調達しやすいことや、それぞれの担当ごとに目的と責任が明確なためチームに一体感が生まれやすいこと、責任の所在がはっきりしているため顧客からの要望やイレギュラーへの対応も柔軟かつ迅速に対応できるという点です。
デメリットは、プロジェクト終了後にチームは解体されるため、それぞれのプロジェクトで蓄積されたナレッジやノウハウの共有がされにくく、ほかのプロジェクトのメンバーとのコミュニケーションが少なくなりやすい点です。

 


 
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マトリックス組織の種類と特徴

マトリックス組織は、図のようにウィーク型・ストロング型・バランス型の3種類に分けられます(※3)。

 

 

ウィーク型は、特定のプロジェクト・マネジャーが基本的に存在せず、マネジャーによる縛りがない分メンバーそれぞれが自由に動くことができます。迅速な意思決定が行われるので、急な変化にもすぐに対応できるというのが最大のメリットです。ただし、指示系統がうやむやになってしまう、個々のメンバーが何をしていて進捗状況がどうなのかといったことを把握するのが難しくなるといった側面があります。ウィーク型を取り入れる場合、それぞれの担当業務についての定期的なコミュニケーションが必要不可欠です。

 

ストロング型は、ウィーク型とは逆にプロジェクト・マネジャーが強い権限を持ち、リソース管理などについても他部門のライン・マネジャーより優先されます。プロジェクトを取り仕切る専門の人間をマネジャーに据えることで、プロジェクト全体をしっかりとまとめられるようになります。また、マネジメントについて高い専門性を有する人間がマネジャーになることで、メンバーに対し適切な指示や対応が行いやすくなります。
しかし、プロジェクト・マネジメントに特化した人材が必須であることや、複数のプロジェクトを進行することが多い企業の場合は部署として設置する必要が出てくるなど、さまざまな課題が生じるのも確かです。専任者やコスト面の点から、資金・人材に余裕がない企業には向かない方法であるといえるでしょう。

 

バランス型は、ウィーク型とストロング型の中間に位置する形態で、プロジェクト・マネジャーをプロジェクトチーム内のメンバーから選出します。そのためコスト面や労働環境面からも導入しやすい方法といえます。現場の状況を把握している人間がマネジメントを行うので、現状に即した指示ができるというのも大きな強みです。ただし、プロジェクトの業務とマネジメント業務の両方を並行して行うため、任命されたメンバーにとってはかなりの負担となります。上位のマネジャーがサポートに回り、プロジェクトの責任が一人に集中しないようにする工夫が必要不可欠です。
 
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マトリックス組織推進の課題と成功のポイント

 

マトリックス組織は、タテ軸とヨコ軸の2つの組織からなる複雑な組織構造であるため、メンバーにとってはプロジェクト・マネジャーと部門(部署)のライン・マネジャーの2人の上司を持つことになります。そのため、指示に齟齬が生じたり、混乱したりすることが想定されます。あらかじめ社内で組織改編についての共通認識を持たせることや、指揮命令系統についてのルールを整理しておくなどの準備が必須です。

 

また、適切な指示を出し、メンバーの状況にあったサポートを行うためには、上司の能力も重要です。上司同士で情報を共有して組織の状況をよく理解したり、それぞれの役割をクリアにして指揮命令系統の混乱を防いだりする必要もあります。同時に複数の組織に属するため、一部のメンバーに業務が集中して大きなストレスになり仕事に影響が出るなどの可能性も高まります。定期的にヒアリングを行うなど、従業員のケアや業務の分散について十分考慮する必要があるでしょう。

 

マトリックス組織を成功させるには多くの課題があります。対応を誤るとマトリックス組織の導入によって損失を出したり、貴重な人材を失ったりするなどマイナスに作用する可能性すらあります。重要なのは、人的負担を軽減するシステムを同時に準備することです。これによってマトリックス組織は本来の力を発揮できるようになるでしょう。そのためにも、3つのマトリックス組織の中で自社の規模や導入目的に合った形態を採用しなければなりません。形態の選択によって成否が決まるといっても過言ではないので、できるだけ慎重に選びましょう。
 
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まとめ

マトリックス組織は従来の組織形状と比べ複雑な構造をしているため、情報共有や指揮命令系統などが錯綜する可能性があります。しかし、「さまざまな業務に対応できる柔軟性」という、ほかの組織構造にはない強みがあることも事実です。上手に活用することで、他社よりもスピードとパワーのある組織体制を構築することが可能となり、人材の育成にも役立ちます。特に、物事をマクロな視点で捉え個々の事象を関連付けて考えるという、管理者にとって必要な能力を育成する土壌となり得ます。マトリックス組織を自社の事業やプロジェクトに最適化し導入することで、事業利益の最大化だけでなく、高い能力を持った人材と強い組織という大きな利益を得られるといえます。

 

※1:Marvin R. Gottlieb 著「The Matrix Organization Reloaded: Adventures in Team and Project Management」(Westport, CT: Greenwood Publishers, 2007)
※2:Glenn Rifkin 著「The Ultimate Entrepreneur: The Story of Ken Olsen and Digital Equipment Corporation」(Contemporary Books; 1st edition, 1988)
※3:Matrix Organizational Structure – A Complete Guide
https://www.whizlabs.com/blog/matrix-organizations-weak-balanced-strong/
 
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佐藤義規
エス・アイ・エム代表(コンサルタント) 佐藤義規
http://simconsul.web.fc2.com/
Fortuneトップ100に入る米欧4社でのマネジメント経験と、ITベンチャーでの起業経験を活かし、ビジネスコンサルタントとして活躍。国内外の事業家支援や企業向けコンサル、起業家や経営者向けセミナーなどを数多く実施。専門は業績改善や業績アップ。また心理カウンセラーの認定を持ち、経営幹部のメンタルサポートや社員のマインド改善セミナーなども行っている。

WORKSHIFT DESIGN 編集部

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WORKSHIFT DESIGN 編集部

WORKSHIFT DESIGN(ワークシフトデザイン)編集部。 働き方を、シフトする。現場目線で新しい時代の働き方を考えるメディアとして【働き方改革】【リモートワーク/ワークスタイル】【残業削減】【業務効率化】をテーマに記事を執筆しています。