自治体の庁内DXを成功させる要因は、大きく分けて3つあります。「職員主導のアプリ内製化」「直感的な操作性による庁内浸透」「実証実験・数値効果に基づく意思決定」です。限られたIT人材、単年度予算、住民サービスを止められないという制約の中でも、グループウェアを軸にこの3つを押さえた自治体は、着実に庁内DXを前進させています。
本記事では、グループウェア「desknet's NEO」やノーコードツール「AppSuite」を導入した複数の自治体の事例をもとに、それぞれが実践した成功要因を具体的に解説します。
この記事でわかること
- 自治体の庁内DXを成功させる要因は「職員主導のアプリ内製化」「直感的な操作性による庁内浸透」「実証実験による数値効果の可視化」の3点に集約されること
- IT担当課だけに開発を集中させず、現場職員自身がノーコードで業務改善を進められる体制が、限られた人員でもDXを止めないカギになること
- 長年慣れ親しんだ操作感を保ちながら刷新することが、庁内への浸透スピードと教育コストを左右すること
- 実証実験などで工数削減率を数値として示すことが、全庁展開や本格投資の意思決定を後押しすること
目次
自治体でDXが進みにくい3つの理由
製造業とサービス業が中心ですが、官公庁・自治体や学校・教育機関、医療・福祉のような紙文化の根強い業種でも数多く取り組まれているのが特徴です。
- IT専門人材が限られている:情報政策課などの担当部署は少人数で、全庁の業務改善要望に個別対応しきれない
- 紙・押印文化と縦割り運用が根強い:課ごとに独自運用されてきた業務が多く、横断的なデータ共有が難しい
- LGWANなど行政特有のセキュリティ制約がある:住民情報を扱うため、システム選定や運用に高いセキュリティ水準が求められる
こうした制約の中でも、着実に庁内DXを前進させている自治体には共通点があります。それが、次に紹介する3つの成功要因です。
成功例1:職員主導のアプリ内製化文化をつくる(鎌倉市)
神奈川県鎌倉市役所(3,000ユーザー・パッケージ版)は、グループウェア刷新にあわせてノーコード開発ツール「AppSuite」を導入し、導入半年で全庁140個以上のアプリを職員自身が作成しました。
背景には、従来のグループウェアが課ごとに独自運用され、課をまたいだデータ共有が難しくなっていたという課題がありました。同市はシステム刷新にあたり、機能を追加するたびに予算取り・要件定義・ベンダー依頼が必要になる従来の進め方を見直し、「柔軟な機能拡張性」を最重要ポイントに位置づけています。
導入後は、デジタル戦略課が各課からの問い合わせを一覧できるアプリや、備品の貸出・返却状況を管理するアプリなどを職員自身が作成。さらに、ベンダーによるアプリ作成勉強会を実施し、参加者50人以上が参加するなど、デジタル戦略課だけでなく現場の各課にも内製化の動きを広げました。
ポイント:機能拡張のたびにベンダーに依頼する体制から、職員自身が小さな改善を積み重ねられる体制に変えたことが、限られたIT人材でも改善を止めない仕組みにつながっています。
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成功例2:実証実験で数値効果を可視化し本導入につなげる(横浜市)
横浜市役所(最大6万人が利用)は、市区局共通のグループウェアとして「desknet's NEO」を導入したうえで、官民共創プロジェクト「YOKOHAMA Hack!」における実証実験を経て、ノーコードで開発した「避難確保計画システム」により関係者の作業工数を41%削減(年間423時間→249時間)するという成果を上げました。
背景には、要配慮者施設約2,700件の避難確保計画をWordやPDFで個別管理しており、329施設が計画を未提出のままになっていたという課題がありました。横浜市は本格導入の前に5カ月間の実証実験を実施し、未提出施設のうち95施設(約3割)が新たに提出、施設管理者の約75%が「入力しやすかった」と回答するなど、効果を数値で確認したうえで本導入に踏み切っています。
ポイント:いきなり全庁展開するのではなく、実証実験で効果を数値化してから本導入を判断したことが、限られた予算の中でも投資判断をスムーズにしています。
成功例3:システム統合によるコスト削減と業務効率化(上野原市)
山梨県上野原市役所(350ユーザー・パッケージ版)は、5年ごとの基幹システム更新のタイミングでグループウェアを乗り換え、年間2万5,000枚の会議資料をペーパーレス化するとともに、初期費用・運用費用を大幅に削減しました。
同市は従来、庁内情報共有システムとWebメールを別々の製品で運用しており、UIの違いと二重のコスト負担が課題でした。desknet's NEOへの統合により、LGWAN側とインターネット側の両方を1つのグループウェアでまかなえるようになり、コストを抑えながらウェブメールへの一本化を実現しています。さらに、月2回・23人参加の幹部会議(資料20~30ページ)や年3~4回の議会関連資料(100ページ)を回覧・レポート機能で電子配布することで、印刷・製本の手間そのものをなくしました。
ポイント:新規導入ではなく「乗り換え・統合」という切り口でも、システムを一本化するだけでコストとペーパーレス効果を具体的な数字で示せます。予算査定の場で説明しやすい成果になる点が、意思決定を後押しします。
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3市の事例比較
| 項目 | 鎌倉市役所 | 横浜市役所 | 上野原市役所 |
|---|---|---|---|
| 利用規模 | 3,000ユーザー | 最大6万ユーザー | 350ユーザー |
| 主な成功要因 | 職員主導の内製化 | 実証実験による数値効果の可視化 | システム統合によるコスト可視化 |
| 象徴的な成果 | 半年で140個以上のアプリを職員が作成 | 避難確保計画の作業工数41%削減 | 年間2.5万枚のペーパーレス化+コスト大幅削減 |
| 主な活用機能 | AppSuite、ChatLuck | AppSuite | ウェブメール、回覧・レポート |
県庁の事例:滋賀県庁、宮崎県総合政策部
市役所とは別に、都道府県レベルでも同様の課題とアプローチが見られます。
滋賀県庁(7,000ユーザー・パッケージ版)は、10年使い続けたシステムの入れ替えにあたり、「操作感を大きく変えない」ことを重視しました。ポータルのアイコン配置を旧システムに似せることで、教育コストをかけずに庁内浸透を実現。導入後は、ウェブメールの容量が200MBから300MBへ1.5倍、保存期間も1カ月から無制限に拡大し、会議のスケジュール調整も数秒で完結するようになっています。
宮崎県 総合政策部(7,000ユーザー・パッケージ版)は、SharePointとExchangeという2つのシステムを併用していた状態から、desknet's NEOへの統合によって1つの画面で業務が完結する体制に刷新しました。庁外への添付ファイルを自動暗号化する仕組みでマイナンバー対応のセキュリティを強化したほか、各部署がExcelで個別管理していた公用車の予約をシステム化し、電話での問い合わせを削減。担当者からは「システム統合でコストを大幅に削減できた」との声が上がっています。
県庁2事例の比較
| 項目 | 滋賀県庁 | 宮崎県庁 |
|---|---|---|
| 利用規模 | 7,000ユーザー | 7,000ユーザー |
| 導入の背景 | 基幹システムのリプレイス(旧システムがWindows10非対応) | 旧グループウェア(SharePoint/Exchange)の契約満了 |
| 主な成功要因 | 操作感を変えない移行による浸透の速さ | システム統合によるセキュリティ強化とコスト削減 |
| 象徴的な成果 | メール容量1.5倍・保存期間無制限、会議調整が数秒に短縮 | 2システムの統合、添付ファイル自動暗号化によるセキュリティ強化 |
滋賀県庁は数値化された成果(容量1.5倍・無制限化)がある一方、宮崎県は「コスト削減」「セキュリティ強化」という定性的な成果が中心で、具体的な削減率などは公開情報からは確認できません。県庁レベルでは、システム統合や移行のしやすさそのものが成果になり得るという視点で捉えると、市役所の事例とあわせて幅広く参考にできます。
そのほかの自治体の取り組み
- 北九州市役所(12,000ユーザー):全庁規模の情報共有基盤として稼働し、行財政改革の土台に
- 福岡県八女市役所(800ユーザー):職員自身によるノーコード開発で、外部委託に比べ機能拡張の期間と費用を抑制
- 群馬県館林市役所(750ユーザー):職員自らのアプリ作成により、現場主体の業務効率化を推進
- 兵庫県神戸市役所(20,166ユーザー):約2万人規模の情報共有基盤として、行財政改革と新たな市民サービスの拡充に活用
- 沖縄県那覇市役所(3,500ユーザー)/滋賀県長浜市役所(1,600ユーザー):システムのリプレイスにより庁内の情報共有・連携を強化
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自治体のDX推進で押さえるべき3つのチェックポイント
紹介した事例に共通するのは、いずれも「システムを入れ替えて終わり」にせず、職員が使い続けられる工夫をしている点です。自庁で検討する際は、次の観点を意識すると成功確度が上がります。
- 現場職員が改善を続けられる体制はあるか:情報政策課だけに開発・改善が集中しない仕組みを用意できているか
- 既存の操作感を大きく崩さずに移行できるか:慣れた画面構成やアイコン配置を活かしつつ刷新できているか
- 本格導入前に効果を数値で検証できているか:実証実験や試行運用で工数削減効果などを確認してから展開しているか
よくある質問
- Q. グループウェアの導入は自治体のDXにどのような効果がありますか?
- A. 自治体では紙・押印文化と縦割り運用が根強く横断的なデータ共有が難しいと言われますが、グループウェアの導入によりペーパーレスを推進したり、庁内の業務データの一元化を行っている例が多く見られます。既存の情報共有システムとウェブメールシステムなど別々で運用していたシステムをグループウェアへ統合することに成功した例もあります。
グループウェア desknet's NEOの官公庁・自治体での実績 - Q. 自治体でもクラウド型グループウェアは導入できますか?
- A. 導入可能です。LGWANなど行政特有のネットワーク要件から、単独の自治体ではセキュリティ面の安心感を重視してパッケージ版(オンプレミス)を選ぶケースも依然として多く見られます。政府情報システム向けのセキュリティ評価制度に対応した専用クラウド基盤に対応するグループウェアであれば、行政に求められるセキュリティ水準を保ちながらクラウド版を利用できる体制が整っています。
- Q. ノーコードツールは情報担当課以外の職員でも使えますか?
- A. 使えます。クリック操作だけでアプリを作成できるノーコードツールであれば、専門的なIT知識は不要です。既存のExcel台帳を取り込んだり、豊富なテンプレートを使ったりして手軽にアプリ化でき、アクセス権の設定など運用管理もしやすい仕組みが備わっています。実際に複数の自治体で、情報担当課だけでなく現場職員自身がアプリを作成・運用する動きが広がっています。
ノーコードで業務アプリ作成ツール AppSuiteの特長
まとめ
自治体のグループウェア導入事例から見えてくるのは、「職員主導の内製化」「実証実験による数値効果の可視化」「システム統合によるコストの可視化」という成功要因です。市役所だけでなく県庁レベルの事例からも、操作感を維持した浸透施策やセキュリティ強化の工夫が参考になります。限られた人員・予算の中でも、これらを組み合わせることが、持続的な庁内DXにつながります。
desknet's NEOでは、自治体向けの導入事例集を無料でダウンロードいただけます。庁内DX推進の参考に、ぜひご活用ください。
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更新日:
執筆者:株式会社ネオジャパン 編集部
desknet's NEOのお役立ちコラムは、1999年の市場参入から25年以上のグループウェア開発・提供実績を持つネオジャパンが、業務改善に役立つビジネス用語の基礎知識、ツールの選び方などの情報をお届けします。グループウェア、そしてノーコードツールの開発・販売の知見をもとに、社内コミュニケーション改善、社内情報の共有といった課題解決に役立つ情報発信をいたします。