2024年下期版
多様化が進むDX時代を生き抜く!

最新グループウェア徹底比較機能編

制作:マイナビニュース

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グループウェアとは?

グループウェアとは、メール/スケジュール/掲示板/ワークフロー/コミュニケーションなど、企業内で情報共有を行うにあたり必要となる各種機能を備えたソフトウェアのこと。社内に散在するさまざまな業務情報・業務処理をグループウェア上で一元管理することで、業務で発生していた非効率を解消するだけでなく、現在さまざまな業種で取り組みが加速しているDX(Digital Transformation:デジタル改革)を推進するための基盤という、新たな役割も担うことが期待されている。製品によって機能の有無やコスト、使い勝手などが異なるため、企業のニーズに応じて最適なものを選ぶことが賢明とされる。

コロナ禍という未曽有のパンデミックを経験したいま、企業においては“ニューノーマル”さえも過去のものとなり、時代に適応したビジネススタイルの確立を目指し、DXの推進が活況を呈している。Web会議、ペーパーレス化の推進、リモートワーク(ハイブリッドワーク)の導入、加えてデータやシステムのクラウド移行……、さまざまな取り組みが多くの企業で実施され、利便性や生産性の向上に対する要求はかつてないほど高まっている。

このようにDXへの取り組みが加速する一方、その本質にまでたどり着けている日本企業は意外にも少ないといえる。そもそもDXの本質とは、単純に企業内の情報をデジタル化する行為を指すわけではない。あくまでもアナログの情報をデジタル化するのは「Digitization(デジタイゼーション)」であり、その情報をもとに業務のICT化を図るのが「Digitalization(デジタライゼーション)」。そして、その先にある企業文化の変革によって“デジタルで新たな価値を創造すること”こそがDXなのである。

実際のところ、自然災害多発やパンデミックの影響から“必要に迫られて”ツールを導入した企業も多いのではないだろうか。しかしこの時点ではまだ局所的な「Digitization」にすぎず、全体最適化は図れていない。そこで改革への意識が高まっている今こそ、組織全体における業務プロセスを見直し、「Digitalization」に着手するべき時といえる。この「Digitalization」に最適なツールがグループウェアなのだ。

これまでグループウェアはスケジュール管理や会議室予約など、定型的な情報を共有・処理するためのツールとして認知されてきた。しかし近年のグループウェアには、高度なワークフロー機能やノーコード・ローコード開発機能などが搭載されており、従来のように「提供されている機能にあわせて使うもの」から「自社の業務にあわせて機能をカスタマイズして使うもの」に変化している。IT部門だけでなく、現場部門もこうしたグループウェア機能を能動的に活用して業務改善を進めていくことで、全社的なデジタルネイティブ化を図り、最終的な目標であるDXの実現に向けた土壌をつくってほしい。

ここでは、クラウド型のグループウェアを中心に、機能面の特徴を比較していきたい。比較対象としたのは、国内外を含む5つの主要なクラウド型グループウェア製品「desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)」「サイボウズ ガルーン」「サイボウズ Office」「Microsoft 365」「Google Workspace」だ。

製品名 提供形態 提供元 最新バージョン(提供時期)
desknet's NEO オンプレミス/クラウド ネオジャパン 8.5(2024年3月)
サイボウズ ガルーン オンプレミス/クラウド サイボウズ 6.0 SP2(2024年6月)
サイボウズ Office クラウド サイボウズ 2024年6月版
Microsoft 365(旧:Office 365) クラウド 日本マイクロソフト 非公開
Google Workspace(旧:G Suite) クラウド グーグル 非公開

※ 2024年6月時点の情報に基づいて作成しています。現在の情報と差異がある可能性があります。

グループウェア選定時のポイント/選び方

グループウェアの本質とは

インターネットの普及や「Windows 95」の登場など、情報化社会に向けて世の中が大きな改革時期を迎えた1990年代。世界でグループウェアが普及し始めたのも、まさにこの1990年代だった。当時のグループウェアといえば、自社内にサーバーを設置するオンプレミス型が主流であり、莫大な導入コストや運用面でのノウハウが必要なことから、利用は大手企業に限定されていた。しかし、各種の情報通信技術やクラウドが大幅に進化した現在では、中小規模の企業でも広く使われるようになっている。

現在、企業の大小を問わず普及したグループウェアは、オンプレミス型、クラウド型ともにいくつかの主要製品がシェアを占める状況となった。しかし、ここで企業にとって新たな問題が発生している。選択肢の数こそ多くはないが、いずれの製品・サービスも多機能を謳っており、「何をポイントに比較選定すべきかが分からない」という声が少なくないのが実情だ。

製品・サービス選びで迷った場合、まずはグループウェアの本質を考えてみていただきたい。グループウェアの本質とは、単なる“メールやスケジュールの管理ツール”ではなく、あくまでも“社内の情報共有を強化・活性化するツール”であるということ。そのうえで、使い勝手を重視するなら機能が絞り込まれたシンプルなUIのものを、情報共有の幅をより広げたいのであれば多機能なものを選ぶと良いだろう。ただし、いずれの場合も“使い続ける”ことが重要なため、ユーザーである社員のITリテラシーや、情報システム部門の知識・スキルに応じて選ぶことが求められる。

グループウェアのトレンドをおさえることもひとつの選定ポイント

グループウェア選定における比較対象として、もうひとつ。ここでは基本事項である「機能」と「使い勝手」のバランスに加え、グループウェアに期待されている新たな可能性として、近年のトレンドともいえるノーコード・ローコードによる「業務の電子化」にも注目したい。

業務の電子化とは、これまで紙・メール・表計算ソフトなどで行われていた各種業務処理について、プログラミングやデータベースなどの知識・経験を必要とせずシステム化し、業務の効率化を実現するというもの。従来のように紙とハンコに依存した決裁処理も、電子化することで大幅な時間の短縮が図れるだろう。また、「働き方改革」を推進するにあたっても、現場の視点で考えた場合、勤務時間を短縮するには業務の絶対量を減らす必要がある。この課題解決手段として、グループウェアが業務アプリ作成ツールの役割を担うことも期待されているわけだ。

これはグループウェアが備えるワークフロー機能に対しても同様に、業務効率化の観点から機能強化への期待が高まっている。このように、グループウェアを選定する際は将来的な可能性を見据え、独自アプリケーション基盤としての役割や、ワークフロー機能の充実度なども考慮すると良いだろう。

リモートワークへの対応

ここでは、現在多くの企業が取り入れているリモートワークとの相性についても論じたい。感染対策はもちろん、大規模な災害が発生した際など、オフィスへの通勤を主体とした従来の勤務形態では、通常業務の継続が難しくなる可能性が高い。そうした点において、リモートワーク環境でもコミュニケーションやデータ共有などを円滑に行える機能が求められている。

それでは、企業におけるグループウェア選定の参考となるよう、主要ベンダーが提供する製品・サービスの機能比較を行いたい。前述の通り、グループウェアはオンプレミス型とクラウド型の2種類に分けられるが、今回は近年とくに需要が増し、さまざまな規模の企業に対応できるクラウド型を中心に紹介する。

国内グループウェア市場の動向

ここ数年、国内グループウェア市場では「Microsoft 365」がシェアを伸ばしているが、その要因のひとつが商用利用権への対応だ。マイクロソフトでは「Word」や「Excel」など各種Officeアプリの利用権を「Microsoft 365」のサービスの一部として提供している。またスマートフォン向けのOfficeアプリについても、ビジネス用途で使うためにはサブスクリプション契約が必要であり、結果としてメールやスケジュール管理といったグループウェア機能も含有される「Microsoft 365」の契約数が伸びているというわけだ。

一方で、国産グループウェアから「Microsoft 365」や「Google Workspace」に乗り換えたユーザーの声として、全社的なコミュニケーションツールはメールが中心となり、それ以外の情報共有のための共通手段が失われてしまった、といった意見も聞こえてくる。これは、国産グループウェアが目指してきた本来の目的とは少々ベクトルが異なるものだ。

もともと国産グループウェアは、Web上にメールより効率的な情報共有とコミュニケーションの手段を提供してメールへの依存を軽減すること、これまで紙やメールベースで行われていた業務フローをデジタル化することで業務のスピード化や効率化を図ること、そして社内向けの情報ポータルを構築することでグループウェアそのものを「社内のコミュニケーションと情報共有の中心地」とすることを目的に提供されてきた。こうした目的の違いを理解した上で、海外製グループウェアを選択するのであれば問題はないのだが、多くの予算をかけて導入した末に「こんなはずではなかった……」という結果は避けたいものだ。

そこで今回のグループウェア比較では、海外グループウェアと国産グループウェアの中で、特に知名度・実績の多い製品をピックアップした。実務レベルで役立つ詳細な機能比較まで行っているので、単にメールとスケジュール管理が目的なのか、それとも組織内・組織間の旧態依然とした情報共有・コミュニケーション手段を見直し、全社的な生産性の向上を目指したいのかなど、グループウェアを導入する目的自体をあらためて考えながら、比較結果を確認してほしい。

【ポイント①】基本機能・アプリケーション

前述した“社内の情報共有を強化・活性化するツール”に求められる機能のうち、ここではグループウェアの基本的な機能としていずれの製品にも備えられており、そのコンセプト自体にも大きな差異が見られない機能を「基本機能」と定義した。なお、機能がある場合には「○」、無い場合には「×」、オプションや拡張、開発などで実装できる場合(完全な別サービスとの連携は含まず)は「△」としている。

基本機能
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
スケジュール
の共有・管理

短評 グループウェアのスケジュール管理機能は、予定入力のしやすさや一覧性だけでなく、いかに部署やチーム内でメンバーのスケジュールを円滑に共有できるかが重要となる。各メンバーのスケジュールを確認できるのはもちろん、空き時間を見つけてダイレクトに会議の招待通知を送付したり、繁忙期などには一時的に他人の予定を表示・非表示したりすることができる機能も便利だ。

共用設備の
予約管理

短評 会議室やプロジェクター、社用車といった企業の共有資産・設備を効率的に活用するには、複数社員で使うことを前提とした共用設備の予約管理が必須といえる。この予約管理をスムーズに行うため、入力や閲覧のしやすさ、即時反映によって重複予約を防ぐリアルタイム性などがポイントとなる。「ガルーン」や「desknet's NEO」では、予約期間や連続予約時間に制限をかけられるといった特徴もある。

メールの
管理・送受信

短評 社内外との業務連絡のみならず、データの送受信から顧客サポートまで幅広く利用されているメール。クラウド型の場合、インターネット環境さえあれば外出先からでも手軽にメールを送受信できるのが大きなメリットだ。端末に依存することなく、受信トレイや送信済みメールなどをすべて共通化できるのも非常に使いやすい。クラウド型ではWebブラウザ経由でのメール利用が基本となるが、中には現場の利便性を考慮し、既存のメールクライアントを使い続けるという選択肢もある。いずれの場合も、ドラッグ&ドロップ対応など現場目線での使いやすさを重視すると良いだろう。そのほか、移行時に既存メールのインポートができるかも確認しておきたい。

ビジネス
チャット
(オプションでの提供) × × × (オプションでの提供)

短評 メールと比べてリアルタイムに意思疎通を図れるのがビジネスチャットのメリット。海外製ではMicrosoft 365 Business Basicのオプションとして「Microsoft Teams」を加えることができるほか、Google Workspaceは「Google Chat」を標準機能として提供している。一方で国産についてもdesknet's NEOのオプションとして「ChatLuck」を加えることができる。

ファイル・
ドキュメント
の共有

短評 業務に必要な情報はもちろん、各種書類の電子化が進んでいる現在、企業内のファイル・ドキュメント数は膨大な数に上るが、これらを集約・共有するのもグループウェアの重要な役目だ。ナレッジの集約という観点に加えて、ファイルの簡単かつ迅速なアップロード&ダウンロード、膨大なデータから目的の情報に素早くアクセスできる一覧性や検索機能、さらには部署や役職に応じたアクセス制限なども選定時のポイントとなる。

電子会議室・
BBSの利用

短評 電子会議室・BBSを活用すると、社内はもちろん離れた拠点間でも、時間や場所にとらわれることなくスムーズな情報共有や意見交換が行える。頻繁に使う機能ほど利便性が重要になるため、ストレスなく入力・閲覧・検索が行えるか、部署や役職に応じたアクセス制限が可能か、データのエクスポートをはじめとした管理者による運用・管理が容易か、といった部分をチェックしておきたい。

社内ソーシャル

短評 近年は個人向けだけでなく、ビジネス向けにも大きな注目を集めているソーシャル機能。単なる情報共有ツールとしての枠を越えて、社内コミュニケーションの円滑化および社員同士のつながりを強化し、職場の雰囲気向上やモチベーションアップ、さらにはグループウェア自体のアクセス頻度向上といった効果も期待できる。Microsoft 365では、「Yammer」の機能や「SharePoint」のソーシャル機能が利用可能。Office 10は、掲示板やメッセージに加えて報告書のコメントにも「いいね!」などで意思表示ができる。desknet's NEOでは、Twitterライクな「ネオツイ」が使いやすい。Google Workspaceについては「Currents」の提供終了に伴い「Spaces」を推進するなど、製品に応じて特徴が異なっている。

利用者名簿・
社員名簿の
共有

短評 スピードと素早いアクションが重視される現代のビジネスにおいて欠かせないのが、メールアドレスや内線番号などが記載された利用者名簿・社員名簿の共有。通常業務の連絡用としてだけでなく、有事の際には緊急連絡先一覧としても活用できる。公開範囲の設定が行えたり、管理者の負担を減らせたり、データのインポート・エクスポート機能を有している点も便利だ。Google Workspaceの場合、「Google コンタクト」のアクセス権を委任することで共有が行える。

連絡先・アド
レス帳の共有

短評 取引先や顧客の連絡先・アドレス帳は、企業にとって極めて重要な情報資産のひとつ。その利便性を高めるポイントとしては、入力や編集作業の容易さ、目的の連絡先をすぐに探し出せる一覧性や検索性、そこからすぐにメール送付などができるアクション性などが挙げられる。こちらもデータのインポート・エクスポート機能の有無はチェックしておきたい。Google Workspaceの場合、「Google コンタクト」のアクセス権を委任することで共有が行える。

社内回覧 × × ×

短評 企業内にはさまざまな連絡手段があるが、その中でも一定の規則に沿って情報共有を行うのに適しているのが回覧。一方的に送信して相手からの返信を待つメール連絡とは異なり、回覧を使うとより効率的な社内連絡が行えるようになる。回覧を受け取った際の通知や既読状況の確認、コメント追加、締め切り日の設定、回覧後の分類・保存といった機能があるとさらに便利だ。desknet's NEOでは、回覧に対するコメント履歴の表示順変更、「全員に返信/転送」の追加、通知メール本文へのアクセスURL追加なども行える。

基本機能・アプリケーションとして挙げた項目については、ビジネスチャットをはじめ一部の機能で外部サービスとの連携を必要とするものの、国内製グループウェアのすべてが一通りを網羅。一方で海外製は、利用者名簿・社員名簿の共有、連絡先・アドレス帳の共有、社内回覧において、機能が非搭載もしくは拡張での対応となっているものがある。特に社内回覧機能については、縦割りの組織構造が多い日本企業での確認・承認作業をスムーズに行うべく、国産グループウェアの多くが力を注いできた成果のひとつといえる。

【ポイント②】スケジュールの共有・管理 / メールの管理・送受信

スケジュールの共有・管理、共用設備の予約管理、メールの管理・送受信、ファイル・ドキュメントの共有に関しては、国内製・海外製ともに機能を有している。これらは日常業務において非常に利用頻度が高く、細かな使い勝手の差異も重要になってくる。そこでとくに顕著な差が見られる、スケジュールの共有・管理とメールの管理・送受信について、より詳細な機能比較を行っていきたい。

スケジュールの共有・管理
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
組織メンバーの一覧表示 × × ×
交通費・経費精算連携
(オプションでの実装)
× × × × ×
空きスケジュールの検索 × × ×
予定承認・否認 ×
リマインダー
複数の休祝日カレンダー ×
アクセス制限

スケジュールの共有・管理については、空きスケジュールの検索、予定承認・否認、リマインダーなどがとくに日常業務でのニーズが高い機能といえる。日本企業特有の要件という意味では、組織に所属するメンバーの予定をまとめて確認したいというものがある。海外製には組織のメンバーを確認する機能はあっても、組織単位で予定を管理・表示する機能が搭載されておらず、国内製グループウェアから離れられないユーザーも一定数存在することが推測される。メンバーの表示順も、役職順や社歴順、年齢順など自由に並べ替えられるようになっており、まさに日本の文化にあった機能といえるだろう。また、国内外を問わず複数の拠点を展開する企業では、部門や拠点ごとに出勤予定が異なるケースも多い。そこで、複数の休祝日のカレンダーを備えているかという点も重視した。

ここで特徴的なのは、国内製がすべて空きスケジュールの検索に対応している点だ。日常業務では、会議や打ち合わせの際に複数メンバーの予定を合わせる機会が多い。各メンバーの空きスケジュールを個別に確認する場合、参加人数が増えるほど手間と時間がかかってしまうが、検索機能があればスムーズに開催日時が決定できる。また、経営者や役員など予定を社内に公開したくない場合に役立つのが、予定のアクセス制限機能だ。いずれの製品・サービスもスケジュール全体でのアクセス制限は可能だが、これに加えて各予定単位で公開・非公開が設定できるとより使いやすい。こうした点では、「Microsoft 365」と「desknet's NEO」では予定をすべて非公開とする以外に、「時間と件名のみ公開」など、柔軟に制御することが可能だ。

メールの管理・送受信
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
IMAP対応
(inbox上の未読メールのみ)
×
誤送信防止機能 ×
共有メールアカウント設定 ×

メールの管理・送受信に関しては、メールサーバーの容量を有効活用できるIMAP対応や、組織メールなどを複数人で共有・対応できる共有メールアカウント設定、いまだに事故が続いているメールの誤送信防止機能を持っているかを重要視し、比較を行った。特に誤送信防止に関しては、企業の情報漏えいリスクを低減するという意味でも、非常に重要なポイントといえるだろう。

【ポイント③】社内の稟議・申請業務を電子化するワークフロー

ここからは、国内グループウェア製品の強みともいえるワークフロー機能を比較していく。

社内の稟議・申請フローを電子化するワークフローに関して、国内グループウェア各製品は「専門知識を持たないユーザーでも構築・運用できること」を一番の特長としている。海外グループウェア製品でも同等の機能を実現することは可能だが、実際には専門技術を持つ外部ベンダーなどに高コストで独自開発を依頼する必要があり、グループウェアの費用だけで実現できるとは言いづらい。そこで、ここでは国産グループウェア製品のみの比較を実施した。
なお、desknet's NEOについては2024年9月1日より提供の「desknet's NEO スタンダードプラン」を使用した前提での比較を行っている。

ワークフロー
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
ワークフロー機能の有無 - - -
入力項目の自由なレイアウト × × - - -
数値・文字の入力 - - -
数値入力時の自動桁区切り × × - - -
ラジオボタン/チェックボックス - - -
日付/日時の入力 - - -
時間の入力 × × - - -
ファイルの添付 - - -
自動計算 - - -
任意の文字列や申請年月を組み合わせた自動採番 × - - -
採番状態の自動リセット × × - - -
任意に行を追加できる明細表の作成 × × - - -
申請内容に応じた経路の自動分岐 × - - -
組織・役割による承認者決定 × - - -
申請書の連続承認 × - - -
代理承認 - - -
引き上げ承認 × × - - -
決済処理中の経路変更 - - -
決裁処理におけるファイル添付 - - -
申請データのクロス集計・グラフ化 × × - - -
API/Webhookによる外部システムとのデータ連携 × - - -

desknet's NEOのワークフロー機能は、比較の前提として挙げた「desknet's NEOスタンダードプラン※」で利用できるノーコード業務アプリ作成機能「AppSuite(アップスイート)」と密接に連携することで、ワークフロー専用ツールに匹敵する機能と柔軟性を実現している。逆に「AppSuite」を利用しない場合、入力項目の自由なレイアウトや明細表の作成などいくつかの機能が利用できなくなることから、実際に機能を評価する際は「AppSuite」を連携させた場合とさせない場合、いずれも確認してほしい。
ノーコード業務アプリ作成機能「AppSuite」に関しては、続く『グループウェアの新たな可能性「ノーコード・ローコードによる業務の電子化」』でも詳しく紹介する。

※パッケージ版で利用する場合は別途「AppSuite」のライセンスが必要となる。

【ポイント④】社内の情報共有を円滑化するポータル・インフォメーション

続いては、ポータル・インフォメーション機能に関する比較だ。こちらもワークフローと同じく国内グループウェア製品の強みであり、「専門知識を持たないユーザーでも構築・運用できること」を特長としている。

ポータルは、企業内の迅速かつ正確な情報伝達・共有を行う基盤として、極めて重要な役割を担っている。しかし、業種や業務内容に応じて必要となる表示項目が変わる場合も多いため、自社にとって最適なポータルを、いかに簡単かつ迅速に構築できるかが重要だ。また、拠点や部門ごとに複数のポータルを作成できるか、ポータルメニューを柔軟にカスタマイズできるか、といった部分も選定ポイントといえるだろう。

たとえば「desknet's NEO」では、ドラッグ&ドロップ操作による容易なポータル設計に加え、ユーザー権限や部署、役職などに応じて各メニューの表示・非表示が設定できるなど、高い柔軟性を有している。加えて、「desknet's NEO」へのログインが全社ポータルへのアクセスとなるため、社内教育やキッティングの手間を省きつつ、散在するシステムと情報を1ヶ所に集約できるのも魅力だ。

ポータル・インフォメーション
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
インフォメーション・
掲示板機能の有無
- - -
インフォメーション情報の
承認機能
× × - - -
ポータル機能の有無 - - -
部門別のポータル作成 × - - -
画像対応コンテンツエディタ × × - - -

ポータルに関しては、コンテンツエディタの使いやすさも重要なポイントとなる。ポータルが企業内の情報発信源として機能するには、掲載内容を頻繁に更新する必要が出てくるためだ。本稿で比較した製品・サービスは、いずれもリッチテキストエディタを備えており、HTMLの知識なしで文字装飾や簡単な表の作成などが行える。一例として「desknet's NEO」の場合、コンテンツ制作の自由度が高まる画像編集ツールを搭載。クライアントPCからダイレクトにアップロードした画像を、Webブラウザ上で編集・レタッチすることができる。画像編集ソフトが使えない工事現場や工場などでも簡単に画像編集が行えるほか、回覧・レポートに対応しているのも便利だ。

【ポイント⑤】グループウェアの新たな可能性「ノーコード・ローコードによる業務の電子化」

近年グループウェアに期待されている新たな可能性として、ノーコード・ローコードによる業務の電子化もぜひ視野に入れておきたい。具体的には前述の通り、これまで紙・メール・表計算ソフトなどで行われていた各種業務処理のさらなる業務効率化を図る、業務アプリ作成ツールの機能比較がメインとなる。本稿で比較した製品・サービスの場合、「サイボウズ Office」と「desknet's NEO」には、それぞれ「カスタムアプリ」と「AppSuite(アップスイート)」というアプリ開発機能が搭載されている。アプリ開発機能のない「サイボウズ ガルーン」に関しては、別サービス「kintone」の「ライトコース」との組み合わせで比較を行った。ただし、「サイボウズ ガルーン」と「kintone」はあくまでも別サービスであり、管理なども個別の対応が必要になることから、あくまで参考としてご覧いただきたい。海外製に関しては、「Microsoft 365」が「Power Apps」、「Google Workspace」が「AppSheet」と連携可能だが、こちらも別サービスとなっている。

ノーコード・ローコードによる業務の電子化
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
Excel台帳管理の
Webアプリ化
※1
紙・メール・FAXによる
業務処理のWebアプリ化
※1
集計結果・グラフの共有 ※1
組織・ユーザー情報の利用 ※1
スマートデバイス対応 ※1

※1 「 サイボウズ ガルーン+ kintone」は、クラウド版のガルーンのみ連携可能。

業務の電子化については、働き方改革においても重視される5つの視点から比較を行った。Excel台帳管理のWebアプリ化は、ローカルで管理している各種台帳データをグループウェア上で管理・共有するためのもの。Excelファイルの管理で発生するデータ集約・共有の手間や、ファイルの紛失・巻き戻りといった課題を解消できる。紙・メール・FAXによる業務処理のWebアプリ化は、現場における旧来の業務処理・手続きを、プログラミングやデータベースの知識なしでWebアプリ化する機能だ。いずれの製品・サービスも対応しているが、実際の使い勝手で若干の差異が見られる。

たとえば「desknet's NEO」の「AppSuite」では、画面を「A4縦」「A5横」など「用紙」として定義する点が特徴的。そこに部品を自由に乗せることで、現在利用している紙の書類をそのまま画面上で再現することができる。これにより特別な社内教育なしで、容易に社内展開が行えるとともに、データを印刷して利用したいというニーズにも対応が可能となる。集計結果・グラフの共有は、作成したWebアプリに蓄積されたデータを自動的に集計・グラフ化し、ポータルでメンバーや社内と共有するためのもの。報告書やレポート作成の負担軽減とともに、情報共有のリアルタイム性も高めてくれる。

組織・ユーザー情報の利用については、グループウェア上で管理している組織やユーザーなどの情報を、Webアプリでそのまま使えるか否かを示している。これは新たなシステムの管理・展開を、手間なくスムーズに開始するうえで欠かせない機能だ。最後に、作成したWebアプリをタブレットやスマートフォンでも利用できるようにする、スマートデバイス対応に注目したい。「desknet's NEO」の「AppSuite」はタブレットのみ対応のため「△」とした。「AppSuite」では多様なニーズに対応できるよう、プラグイン機能を搭載しており、手書き入力やリアクション等の拡張部品が利用可能。今後も更なる機能拡充に期待したい。

機能評価は「何をもって?」

ここまでの機能比較で示したように、グループウェアの選定・評価で迷っている場合は、まず導入する目的自体を見つめ直してみると良いだろう。たとえば、国内外に多くの拠点を有し、グループウェアとシームレスに連携可能なWeb会議機能を重視する場合、海外製の「Microsoft 365」と「Google Workspace」が有力候補といえる。逆に既存のWeb会議システムを使い続けるなど、純粋なグループウェアとして細かな利便性を求める場合は、国内製の「desknet's NEO」「サイボウズ ガルーン」「サイボウズ Office」に候補が絞り込まれてくる。

また、グループウェア選びで最も重要なポイントといえるのが、実際に活用する現場視点での使いやすさだ。グループウェアは「“使われなければ意味がない”ツール」であり、使われるためにはユーザービリティの高さが大きく影響してくる。いくら必要な機能を網羅していても、「UIが見づらい」「各アプリケーションが孤立して連携力に欠けている」といった欠点があれば、常日頃から業務で使用する社員に大きなストレスを与えてしまう。こうしたストレスの蓄積が利用率低下を招くため、グループウェアは現場視点での使いやすさを重視して選びたい。

このような点において「desknet's NEO」は、以前より定評のある使いやすいUI、ノーコード・ローコードで業務アプリを作れる「AppSuite」、その「AppSuite」と連携して現在の申請書式のデザインをそのまま再現できるワークフローなど、現場の利便性および業務効率の向上につながる数々の機能を搭載。さらに、災害時の緊急連絡や情報収集に役立つ安否確認機能、別途有償ライセンスが必要になるもののシステムに統合された利便性の高いウェブ会議機能、Amazonビジネスと連携した社内購買機能、専用スマートフォンアプリの無償提供なども魅力のひとつ。企業が働き方改革を推進する上でも大きな力となってくれるだろう。

そしてもうひとつ、自社のITリテラシーがどの程度のレベルにあるのかを、事前に把握しておくことも重要だろう。これは情報システム部門だけでなく、実際に現場で利用する社員についても同様で、ITリテラシーの高さによって“使いやすい”と感じるレベルが異なるためだ。特に海外製は、日本企業向けの細かい機能に特化していない分、比較的ITリテラシーの高い企業向きともいえる。たとえば「Google Workspace」のカスタマイズは、情報システム部門にある程度の知識・スキルが求められる。また、「Microsoft 365」はドキュメント作成・編集やOutlookの使い方に慣れているユーザーでも、Exchangeでのスケジュール管理、SharePointやExcelを用いたワークフロー構築などを行うには相応の教育が必要だ。一方の国内製製品は、日本人にとって使いやすい仕様になっているものが多いといえる。

マルチデバイス対応、グローバル対応、管理機能を軸としたグループウェア比較

それでは続いて、各種デバイスへの対応や管理機能などについての比較を見ていこう。

タブレット対応
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
対応プラットフォーム iOS、Android、Windows iOS、Android、Windows iOS、Android、Windows iOS、Android、Windows iOS、Android、Windows iOS、Android、Windows(一部機能制限あり)
利用可能機能 PCと同じ PCと同じ PCと同じ PCと同じ PCと同じ PCと同じ
操作性 専用アプリによるタッチ操作を考慮したインターフェース設計。Webブラウザからの利用も可能 タッチ操作を考慮したインターフェース設計 タッチ操作を考慮したインターフェース設計 タッチ操作を考慮したインターフェース設計 タッチ操作を考慮したインターフェース設計 タッチ操作を考慮したインターフェース設計
スマートフォン対応(専用アプリ)
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
対応プラットフォーム iOS、Android iOS、Android iOS、Android iOS、Android iOS、Android iOS、Android
プッシュ通知
利用可能な機能 スケジュール、設備予約、インフォメーション、ウェブメール(POP)、ウェブメール(IMAP)、回覧・レポート、アドレス帳、ワークフロー、ToDo、キャビネット、伝言・所在、利用者名簿、安否確認、メモパッド、ネオツイ スケジュール、ワークフロー、メッセージ、掲示板 スケジュール、メール、メッセージ、メモ、掲示板、ワークフロー、カスタムアプリ Microsoft Copilot、Word、Excel、PowerPoint、PDFをまとめた「Microsoft 365 モバイル アプリ」でドキュメントの検索、作成、編集、共有が行えるほか、Microsoft関連の各種アプリも利用可能 モバイル版のWord、Excel、PowerPoint、Outlookを利用可能 メール、スケジュール、社内コンテンツ検索、オンラインアドレス帳、チャット、ビデオ会議、オンラインファイルストレージ、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、テキストメッセージ/通話/ボイスメール
グローバル対応
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
タイムゾーン(時差)対応 ×
多言語メール送受信 ×
クライアント多言語対応 ×
利用可能言語 日本語・英語 日本語・英語・中国語(簡/繁) 日本語のみ 日本語・英語など44カ国語 日本語・英語など100カ国語以上
管理機能
搭載機能 ネオジャパン サイボウズ 日本マイクロソフト グーグル
desknet's NEO サイボウズ ガルーン サイボウズ Office Microsoft 365 E3 Microsoft 365
Business Basic
Google Workspace
詳細 詳細 詳細 詳細 詳細 詳細
組織・グループの階層管理 ×
役割(ロール)管理 ×
アクセス権限
管理権限の委譲
ユーザーの一時停止機能
削除ユーザーの復旧 ×

マルチデバイス対応

スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは、いまやビジネスにおいても必要不可欠なアイテムとなっている。こうした企業の動向を受けて、グループウェアでもマルチデバイスに対応する製品・サービスが増加。本稿で比較した製品・サービスも、すべてマルチデバイス対応となっている。ただし、同じマルチデバイス対応でも製品・サービスによって、その利便性が異なっている点に注意したい。スマートデバイス特有の小さな画面とタッチ主体の操作方法に加え、画面の構成や遷移方法、タップするボタンのサイズなど、実際の使い勝手を十分に考慮した選択が望ましいだろう。

スマートフォン向けの専用アプリは、各製品で利用できる機能に差が見られる。たとえば「Microsoft 365」の場合、「Microsoft 365 E3」が「Microsoft 365 モバイル アプリ」に加えて各種Office関連のアプリも利用できるのに対して、「Microsoft 365 Business Basic」では「Word/Excel/PowerPoint/Outlook」のみに限定されているといった点には注意したい。「desknet's NEO」に関しては、これまでアプリ上から使える機能に制限があったが、2024年3月のリリースで大幅に進化。新たに10の機能を利用可能になったほか、回覧・レポートの作成にも対応するなど、使い勝手が飛躍的に向上している。

なお、専用アプリを使う製品はタッチ操作に長けたものが多い反面、インストール作業やバージョン管理など、管理者の手間が増える要因にもなるので注意が必要だ。

グローバル対応

タイムゾーン(時差)対応や多言語メール送受信、クライアント多言語対応、利用可能言語など、グローバル対応も選定時のチェックポイントとなるだろう。現在は大手企業だけでなく、中小規模の企業でもクローバルビジネスを展開する時代となっている。いまのところ国内市場のみをターゲットとしていても、将来性を鑑みてグローバル対応の製品・サービスを選んでおく、という選択肢もあるだろう。本稿で比較した製品・サービスに関しては、「サイボウズ Office」以外の全製品がグローバル対応となっている。こうした基本的なグローバル対応機能に加え、海外拠点では日本国内と休祝日が異なったりもするので、「スケジュールの共有・管理」項目として挙げた「複数の休祝日カレンダー」も利用できると便利だろう。

管理機能

管理機能の充実度も忘れてはならない。今回挙げた6種類の機能は、いずれもグループウェアを管理するうえで重要度が高いものだ。たとえば、社内の部署が細分化されていたり、臨時プロジェクトの発足が多かったりするような企業の場合、組織・グループの階層管理や役割(ロール)管理を重視した方が良い。また、誤ってユーザーを削除してしまった場合などは削除ユーザーの復旧が役に立つ。復旧できる期間やユーザーに紐付く情報の内容は製品・サービスによって異なるので、事前に確認しておくと良いだろう。本稿で比較した製品・サービスでは、「サイボウズ Office」以外がすべての比較項目を網羅する結果となった。なお「サイボウズ Office」では、「アドレス帳/ワークフロー/報告書/プロジェクト/カスタムアプリ」に限り運用管理者の設定が行える。

最新クラウド型グループウェア徹底比較 総論

本稿ではクラウド型のグループウェアを中心に、現在のトレンドや国内市場の動向紹介、そして実務レベルで役立つ詳細な機能比較を行ってきた。最後に改めて、全体の傾向を確認してみたい。

『国内グループウェア市場の動向』で触れた通り、海外製では「Microsoft 365」がシェアを伸ばしている。グループウェアに対して求める要件がメールとスケジュール管理中心ということであれば、商用利用権の関係からも優位性が高いといえるだろう。本稿で比較対象とした「Microsoft 365 E3」と「Microsoft 365 Business Basic」以外にも複数のプランがあり、規模やITリテラシーの高さに応じて最適なものを選びたい。一方の「Google Workspace」についても、アップデートにより機能拡充が繰り返されており、グループウェアとしての完成度が高まってきている。とりわけ各アプリケーションの連携能力は注目すべきところだ。ただし、カスタマイズの幅が広い反面、使いこなすには情報システム部門に相応の知識・スキルが求められる点に注意してほしい。

国内製グループウェアに関しては、サイボウズが「ガルーン」および「Office」という2つの製品で市場ニーズをカバーしているのに対し、ネオジャパンの「desknet's NEO」は単体で幅広い企業規模やニーズに対応しているのが特徴的だ。ビジネスの成長に応じて「Office」から「ガルーン」へ移行する場合、他社製品の移行と比べてコストを抑えられるものの、使い慣れたグループウェアを変更することは、現場のユーザーにとってストレスとなり、業務効率を低下させる可能性もある。そうした観点から、幅広い対応能力を持つ「desknet's NEO」は、長く使い続けられるという強みを持つ。

なお、海外製・国内製の各サービスともクラウド型が主体となっているが、ランニングコストやセキュリティなどの関係から、オンプレミス型での導入を選択したいケースもあるだろう。こうした側面から見ると、現時点でオンプレミス導入に対応しているのは「desknet's NEO」と「サイボウズ ガルーン」のみ。さらに、グループウェアと連携するノーコード・ローコードツールの利用も条件とすると、選択肢は「desknet's NEO」のみとなる。

このようにクラウド型を中心として、中小規模の企業からもニーズが急増しているグループウェア。本稿で紹介した新たな可能性「業務の電子化」の先には、独自アプリケーション基盤としての役割が拡大し、グループウェア以外の業務に関する電子化まで実現できるといった将来も見えてきた。

最後に、グループウェアの選定で迷った際は、「なぜグループウェアが必要なのか」をあらためて考えてみてほしい。単にメールとスケジュール管理をしたいのか、組織内・組織間の情報共有・コミュニケーション手段を一新して全社的な生産性の向上を図りたいのか、その目的によって必要な機能が変わってくるはずだ。結果として、ひとつのグループウェアだけで目的を達成できないのであれば、複数の製品・サービスを組み合わせるという方法もある。もちろんそれなりにコストは必要となるが、中途半端に妥協して“使われないツール”になってしまっては本末転倒。実際、社外向け文書の作成用に「Microsoft 365」を使いつつ、社内コミュニケーションなどを別のグループウェアが担っているというケースは少なくない。たとえば「desknet's NEO」の場合、「Microsoft 365」との連携にも対応しており、海外製・国内製の「良いとこ取り」をした環境を容易に作ることが可能だ。

グループウェアはストレスなく快適に使ってもらうことが重要であり、業務に必要な機能の有無はもちろん、現場における利便性の配慮も大切な選定ポイントとなる。こうして選んだツールこそ、“活きたツール”としてDXを牽引する旗頭となってくれるだろう。

グループウェア選定の際は、本稿も参考に自社のニーズに適した製品を選んでいただきたい。

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