勤務時間とは?
労働時間との違いや適切な管理方法を解説
勤務時間と労働時間は、日常的に同じ意味合いで使われることが多いですが、実際には法律上で区別されており、正しく理解することが重要です。どの時間が実際に労働と認められるかが変わってくるため、企業としては適切に区分しないと給与計算や残業代の支払いなどでリスクを抱える可能性があります。
本記事では、勤務時間と労働時間の基本的な違いをはじめ、法定労働時間や所定労働時間の考え方などを分かりやすく解説します。さらに、実務における勤怠管理の方法・システム導入に関するポイントについても取り上げます。
これらのポイントを押さえることで、企業としては労務管理のリスクを低減し、従業員にとっても安心して働ける環境づくりが実現しやすくなります。ぜひ最後までご覧いただき、正確な管理や労働時間の取り扱い・ルールを理解していきましょう。
勤務時間とは?
勤務時間とは、企業が就業規則などで定める始業から終業までの時間帯を指します。一般的には、朝の出勤時刻から夕方あるいは夜の退勤時刻までが勤務時間とされることが多いですが、移動時間、休憩時間などを含めて広い視点でとらえます。

一方で、実際に業務を行っていない休憩時間や待機時間がどの範囲で労働とみなされるのかは、法的な観点から別の判断が必要です。企業は、時間外労働の計算や社会保険の適用などを誤らないよう、勤務時間と労働時間の扱いを明確に区別する必要があります。
多様な働き方が進む昨今では、フレックスタイム制やリモートワークなどにより、従来の決まった時間帯だけを勤務時間とみなす流れが変化しています。こうした変化に対応しつつ、法律の定める基準を守るためにも、まずは勤務時間全体の枠組みをしっかり理解しておくことが大切です。
勤務時間の定義と範囲
法律的には勤務時間という言葉に厳密な定義はなく、企業が独自に設定した労働日の始業から終業までの所定の時間帯を指すことがほとんどです。就業時間という言い方をすることもあります。実際に作業をしない時間や打ち合わせの準備、着替えの時間などが含まれる場合もあり、労働時間と区別が難しいケースが多くあります。
特に休憩の取り方によっては、勤務時間に含まれる時間帯と労働とみなさない時間帯が混在しやすくなります。企業は就業規則を通じて、どこからどこまでを勤務時間とするのか明示しておくことが不可欠です。
勤務時間が定められていないと、残業代や休日出勤などの割増賃金の適用範囲もあいまいになり、トラブルに発展する可能性が高まります。トラブル回避や従業員の労働環境の適正化をはかるためにも、勤務時間の定義を明確にしておくことが重要です。
勤務時間と労働時間の違い
勤務時間と労働時間は混同されがちですが、法律上はしっかり区別されます。

勤務時間は企業の管理上の概念であり、実際にどのように働いたかに関わらず、始業から終業までのスケジュールを示すものです。これに対して、労働時間は労働基準法などで明確に定義され、実際に使用者の指揮監督下で作業を行っている時間を指します。従業員の権利を守るためにも、企業のコンプライアンスを確保するためにも、両者を正しく理解しておくことが大切です。
例えば、勤務時間内に設定された休憩時間は労働時間には含まれません。しかし、業務指示などにより自由利用が認められない場合は待機とみなされ、労働時間として扱われる可能性があります。
労働時間の定義と判定基準
労働時間とは、使用者の指揮監督下にある時間のことを指します。具体的には、業務の指示や作業の実施が行われている時間はもちろん、着替えの時間や業務以外の準備時間であっても指揮監督が及ぶ場合には労働時間とみなされる可能性があります。
判定基準としては、従業員が業務命令に反して自由に離席できない状態であれば、それは労働時間に該当することが多いです。ただし、どの程度の拘束があるのか、企業側が業務指示を行うかどうかなどによって細かな判断が必要です。
このため、判定に迷うケースでは就業規則や労使協定でルールを整備し、あらかじめ従業員に周知しておくことが望ましいといえます。
よくある混同と注意点
よくある混同例として、待機時間や休憩時間の扱いがあります。勤務時間内であっても、従業員が自由に利用できる休憩時間は労働時間に含まれませんが、企業の指示でいつでも作業に入れるよう待機させる場合は労働時間と評価されます。
また、事業場外で行われる営業活動などは、使用者の管理が難しく、みなし労働時間制や裁量労働制の対象となる場合があります。こうした特例を適用する際は、みなし時間の設定方法や業務内容の明確化を慎重に行う必要があります。
勤務時間と労働時間を誤って処理すると、残業代の未払いなどで企業にとって大きなリスクにつながりかねません。定義に関して正しく理解し、社内ルールに反映させることが不可欠です。
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法定労働時間と所定労働時間の基本
日本の労働基準法では、法定労働時間と所定労働時間を明確に区別しています。
日本の労働基準法では、1日8時間、1週40時間を超える労働が法定外残業とされ、その範囲では割増賃金を支払う義務が生じます。この基準を上回る労働をさせる場合、企業は労使協定を結ぶなど法的な手続きを踏まえる必要があります。

企業が独自に設定する所定労働時間は、法定労働時間を上限として自由に短縮できる一方で、所定時間内の残業をどう扱うかがポイントになります。所定時間を超えていても、法定内に収まる場合は割増賃金が発生しない場合があるため、就業規則で明確に定義しておくことが大切です。
また、勤務時間中に必ず取らなければならない休憩や休日も労働基準法によって定められており、6時間を超える労働で45分以上、8時間を超える場合で1時間以上を確保する必要があります。週1日の休日確保も重要な要素で、休日労働時にはさらに割増賃金が発生します。
法定労働時間の仕組み
法定労働時間は、1日8時間・週40時間となっており、これを超えた分は基本的に時間外労働とみなされます。企業がこの基準を上回る働き方を従業員に求める場合は、残業代の支払いが生じるだけでなく、36協定の締結が必須です。
この規定は労働者の健康を守るために重要な意義を持ち、過度な時間外労働を抑制する狙いがあります。近年では長時間労働の是正が社会課題となっており、従業員の健康と企業の生産性を両立させる工夫が求められています。
企業側は、法定労働時間を知った上で社員のシフトや勤務計画を立案し、就業規則に適切に反映させることで、後々のトラブルを防止しやすくなります。
所定労働時間との違い
所定労働時間は各企業が独自に設定する労働時間であり、法定労働時間を超えない範囲で短縮することが可能です。例えば、1日7時間勤務という所定労働時間を定める企業も少なくありません。 ただし、所定労働時間を超えても法定労働時間内に収まる場合は、いわゆる法定外残業には当たらないため、割増賃金の支払い義務が生じないケースがあります。これを認識していないと、払い過ぎや払い不足などの混乱を招く恐れがあります。 正しい区別をするためには、就業規則や労働条件通知書に所定労働時間を明記するとともに、スタッフに周知しておくことがトラブル回避の近道です。
休日・休憩時間の原則
労働基準法では、週に1日以上の法定休日を与えることが原則とされています。仮に4週間で最低4日を確保する形でも良いとされますが、企業はなるべく安定した休日を設定することで従業員の健康を守る責任があります。
休憩時間については、労働時間が6時間を超えれば45分以上、8時間を超えれば1時間以上の休憩時間を確保しなければなりません。休憩をとらずに働き続けることは法律で禁じられており、従業員の安全衛生上も問題が大きいです。
休憩や休日の扱いは、従業員のモチベーションや定着率に大きく影響します。早めに明確な規定を用意し、管理しやすい仕組みを整えることが結果的に企業のメリットにつながります。
多様な働き方における勤務時間の例外規定
変形労働時間制や裁量労働制など、働き方の多様化に伴い例外規定が定められています。
近年、働き方の多様化に対応するために、法律でもさまざまな例外規定が設けられています。これらの制度は、従業員の働きやすさを向上させる一方で、適用時のルールを正しく把握していないと、結果的に労務管理上のリスクが高まる可能性があります。
多様な働き方の導入にはメリットも多いですが、無計画に始めると予定以上の残業が発生したり、従業員とのコミュニケーションが不足したりするケースもあります。法律と自社の実態を踏まえ、適正に運用する姿勢が重要です。
変形労働時間制の概要
変形労働時間制は、一定期間を平均して週40時間の法定労働時間を守れれば、特定の時期に集中的に働かせることができる制度です。繁忙期と閑散期の差が大きい業種で活用されることが多く、シフト組みに柔軟性をもたせるメリットがあります。
ただし、導入するには期間の設定や労使協定の締結など手続きが必要です。誤った運用をすると、想定以上の時間外労働が発生し、割増賃金が高額になるリスクがあります。
企業がこの制度を正しく活用するためには、日々の勤怠管理に加えて、長期的な視点で勤務シフトを計画し、従業員にもきちんと説明することが不可欠です。
みなし労働時間制・裁量労働制の仕組み
みなし労働時間制とは、事業場外での活動など管理が難しい業務に対して、実際の労働時間に関わらず一定の時間を労働したとみなす制度です。出張や営業活動が多い社員が対象となることが多く、管理負荷を軽減するメリットがあります。
裁量労働制は、研究開発や専門的業務などの従業員が、自らの裁量で仕事を進める場合に導入されます。企業と従業員が合意のうえで労働時間を定め、実際の就業時間に関係なく同等の成果を求めるスタイルです。
こうした制度を導入するときは、業務の範囲や評価の方法を明確化しないと、長時間労働を助長してしまう恐れがあります。適切な設計と運用ルールの設定が不可欠です。
高度プロフェッショナル制度と対象範囲
高度プロフェッショナル制度は、高収入かつ高度な専門知識を有する職種に対して、労働時間の規制を外す代わりに健康確保措置や年次有給休暇の確実な取得が求められる取り組みです。成果に見合った報酬制度として設計されることが多いです。
しかし、適用対象となるのは年収要件や職種要件を満たした一部の労働者のみであり、一般社員にまで拡大することはできません。企業が対象者の判断を誤ると、未払残業代の問題に発展するリスクがあります。
導入を検討している企業は、専門家の助言を得ながら就業規則の改訂や健康管理体制を整備し、法令を遵守したうえで社員の負担が大きくならない運用を目指すことが大切です。
管理監督者の位置づけ
管理監督者は、企業の経営に直接関わるような役職者を指し、労働時間や休憩、休日に関する規定が適用されない場合があります。その代わり、一般社員とは異なる給与体系や待遇を与えることが望ましいとされています。
この区分を不適切に運用すると、管理監督者として扱われた労働者が残業代を請求する事態が発生することもあります。実態として経営判断に大きく関与していないにもかかわらず、管理監督者の扱いにしているケースに注意が必要です。
正しく区分するためには、企業がどのような役職にどのような権限を与えているかを明確に整理し、就業規則で定義しておくことが重要です。
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労働時間の適正把握と管理方法
適切な勤怠管理は企業運営において欠かせません。基本的な管理方法を再確認しましょう。
従業員の労働時間を正しく把握できないと、割増賃金の計算ミスや過重労働の見落としにつながる恐れがあります。企業のコンプライアンスを守るためにも、より正確性が担保されたシステムを検討することが望まれます。
また、グループウェアのように、スケジュール管理やプロジェクト管理と連動できる仕組みを使う企業も増えています。使い勝手やコスト面を比較検討しながら、最適な管理方法を選択することが大切です。
タイムカードの利用
タイムカードは古くから多くの会社で採用されてきた方法で、打刻機にカードを通すだけで出退勤を記録できます。単純明快なシステムですが、紙やカードの紛失、打刻忘れ、打刻修正が難しいなどのデメリットも存在します。
しかし、操作自体は非常に簡単で、従業員一人ひとりが意識して出退勤時にカードを通すだけで勤怠管理の形を整えられます。人事担当者が紙ベースのカードを集計する手間はかかるものの、コストを抑えたい小規模な事業所では依然として重宝されています。
打刻ミスを防ぎ、正確なデータを取るためには、従業員に打刻の徹底と打刻漏れ時の報告方法を周知する必要があります。適切に運用すれば、長年使われてきた安心感のある仕組みと言えるでしょう。
Excelでの管理
Excelで勤怠を管理する方法は、比較的コストがかからず、導入ハードルが低いのが特徴です。従業員に個別のシートを配布し、各自が記入して提出する形が多く見られます。
一方で、データを手入力する過程でミスが発生しやすく、後で修正や集計をするときに時間がかかるという課題があります。始業時刻と終業時刻の記入は個人に委ねられるため、報告の正確性にも欠けます。担当者が数式やマクロを組んで管理を自動化する方法もありますが、運用ルールを統一しないと混乱しがちです。
利用時には、どこまで従業員の自己申告に頼るのか、どの段階で管理者が確認するのかを明確に決める必要があります。特に労働時間が多い職場では、Excelによる管理が煩雑になりやすいので注意が必要です。
グループウェアの機能を利用
グループウェアの機能を利用すれば、スケジュール管理や業務進捗と労働時間のデータを一元化できるため、チームでのコミュニケーション効率を高める利点があります。メールやチャットなどの連携機能を備えている場合には、勤怠管理以外の業務でも活用しやすいでしょう。
ただし、専用システムほど勤怠管理に特化していないため、集計項目や分析レポートの自由度が低いケースも見られます。企業によっては残業時間や休日出勤の管理を詳細に行う必要があるため、その点をカバーできるかどうかを確認することが大切です。
導入する際には、操作性やサポート体制の有無、運用コストなどを比較検討し、実際に社内で使用する従業員の意見を取り入れながら選定することが望まれます。
勤怠管理システムを利用
近年ではクラウド型の勤怠管理システムを導入する企業が増えています。ICカードやスマートフォンなどで打刻を行い、自動的に時間を集計してくれるため、手作業のミスを大幅に削減できる点が魅力です。
システムによっては労働基準法に沿った残業アラートや有給休暇管理機能なども搭載されており、企業よるルール違反を未然に防ぐサポートをしてくれます。さらに、クラウド上で常にアップデートを行うので、法改正にも柔軟に対応が可能です。
社員への研修や運用フローの整備を徹底し、負担なく活用できる環境を整えることが活用のカギになります。
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労働時間の適切な管理におすすめの方法
企業の実情に合ったツールやサービスを選び、正確かつ効率的な勤怠管理を実現しましょう。
コストや運用体制、人事担当者のリソース状況を踏まえて、システム導入やグループウェアとの連携を検討することも重要です。
シフト勤務や多様な勤務形態を持つ企業では、ミスなく正確に勤務時間を記録する仕組みが不可欠です。給与計算までを自動化すれば、担当者の負担を軽減できるだけでなく、従業員とのトラブルも回避しやすくなります。
ここでは国産グループウェア desknet's NEOと連携するアマノビジネスソリューションズ社の勤怠管理サービス「CLOUZA」をご紹介します。
グループウェアと勤怠管理サービスが連携 タイムカード+CLOUZA

企業のスケジュール管理やコミュニケーションを担うグループウェアと、勤怠管理サービスであるCLOUZAを連携させる方法は非常に効果的です。タイムカード感覚で打刻を行い、リアルタイムで勤務状況をポータル画面上に反映できます。
CLOUZAは、法令に準拠した割増賃金の計算や、時間外労働のアラート機能なども備えており、人事担当者の作業負担を大幅に軽減できるのが特徴です。日常業務で使用するグループウェアと連携することで、従業員は打刻の手間なく、より正確な勤怠管理を行いやすくなります。
初めてこうしたシステムを使う企業でも、操作がシンプルで導入後のサポートが充実しているサービスを選べば、スムーズに運用へ移行できます。従業員にメリットをしっかり伝えながら、企業全体で勤怠管理の意識を高めていきましょう。
スマートフォン打刻、シフト勤務に対応したリアルタイム集計、給与計算ソフト連携など、
勤怠管理業務をさらに効率化するクラウドサービス
まとめ
勤務時間と労働時間の区別、法定労働時間の考え方、残業や多様な働き方の例外規定を正しく把握しておくことは、リスク回避や従業員満足度の向上につながります。管理ツールやシステムを活用しながら、適切な労務管理を行いましょう。
まず、勤務時間とは企業が定める始業から終業までの全体の時間帯であり、労働時間とは実際に業務に従事した時間を指すことを理解しておくことが大切です。法定労働時間や残業の上限を守らなければ、罰則や未払い残業代のリスクが高まります。
多様化する働き方に合わせて例外規定や制度を活用する場合でも、従業員の健康と企業のコンプライアンスを両立させるため、正しい制度運用が求められます。適切な勤怠管理があってこそ、従業員のパフォーマンス向上にも繋がるでしょう。
これらを踏まえたうえで、全社的に労務管理の意識を高め、確実な運営を行っていきましょう。
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執筆者:株式会社ネオジャパン 編集部