経営の見える化と可視化

最近、「経営の見える化」という言葉をよく耳にします。中小企業においてもこの考え方を取り入れて全社一丸となった取り組みが推進されていますが、十分な成果につながっていないケースも多いようです。
今回は、「経営の見える化」を自社経営に生かすためのポイントについて紹介します。

経営の見える化とは

経営の見える化とは

見える化とは、その言葉どおりに解釈すれば、「それまで見えなかった・見えにくかった情報を誰がみても分かるようにすること」です。
一般的な中小企業では、経営陣と社員間、社員同士の関係が密接であり、誰が何をしているかといった様子をうかがうことがそれなりにできます。そのため「すでに相互理解ができている」、つまり「見える化」ができていると考えがちです。
しかし実際には、経営者から社員に対してビジョンや方針が十分に伝わっていないことは多いものです。
ビジョンや方針は社長の頭の中だけにあり、社員は指示に従うだけ、というケースもあるでしょう。
また、社員同士も自分の目先の業務遂行に注力するあまり、全社の動向や他のメンバーの様子に関心を寄せる余裕がないという事態もみられます。

見える化と可視化

見える化の本当の意味を考えるために、見える化と、いわゆる「経営の可視化」との比較をしてみましょう。

「経営の可視化」とは、会社にとって都合のよいこと・悪いことの区別なく、すべての情報をオープンにして誰もが目にすることができる状態にしておくことです。
その主な目的は情報を公開することそのものにあると認識されていることが多いようです。

一方、見える化の目的はあくまで「経営上の問題を解決すること」にあります。
見える化された指標は、経営者と全社員が一丸となって問題解決していくための共通の指針やモノサシにならなければなりません。

「見える化」の本当の意義は、システムなどで情報を羅列的に見えるようにするだけではなく、共有すべき情報が体系的に整理されていて、社員がその情報を自立的かつタイムリーに入手し、自らの問題解決に活用することにあるのです。

見える化実現によるメリット

見える化実現によるメリット

経営の見える化は一般社員も含めた会社全体に大きなメリットをもたらします。
主なメリットを整理すると次のようになります。

  • 1.ビジョンや経営戦略に対する社員の理解が深まる
  • 2.ビジョン・戦略・戦術・運営に一貫性をもたせることができる
  • 3.一枚岩の組織をつくることができる
  • 4.現場の変化に即応したスピーディーな意思決定を行うことができる
  • 5.個人のノウハウが組織のノウハウとして蓄積される
  • 6.より多面的な視点でのトラブル回避が可能になる
  • 7.内部統制・コンプライアンスが強化される
  • 8.公正・公平な評価につながる
  • 9.取引先などの外部からの信頼を得られる

見える化への3つのステップ

見える化への3つのステップ

では、見える化実現のためには何から始めればよいのでしょうか。
先述したように、見える化とは大変広い意味であるため、定義や取り組みは企業によってさまざまです。
ここでは、見える化を3つのステップに分けて、それぞれのポイントと主な要件を紹介していきます。

1.第1のステップは「ビジョン」・「戦略」・「ルール」の見える化

社長が社員に対して「ことあるごとに目標や組織のあり方を伝えている」つもりでいても、社員によって受け止め方が違い、それが会社のビジョンに基づくものであると理解されていないようでは、見える化されているとはいえません。
見える化において重要なのは「目指すべきビジョンが示され、ビジョン実現のための戦略・ルールが共有できていること」にあります。

<「ビジョンやルールの見える化」の主な要件>

  • ・会社のあるべき姿、経営ビジョンなどが明文化されている
  • ・社員の行動指針があり、会社として「やるべきこと」「やってはいけないこと」が示されている
  • ・ビジョンに基づいた中期計画、年度計画が策定され、かつ公開されている
  • ・3年先の自社の中期目標について、その骨子部分は全社員が深く理解している
  • ・社長は少なくとも月に1回は自分の言葉で社員にビジョンや戦略について語っている
  • ・経営幹部陣はビジョンや戦略について社長とほぼ同レベルで理解している

2.第2ステップは「問題」・「課題」の見える化

見える化の次のステップは、現在自社に起こっている「問題」を把握したうえで、「では何をすべきか」という「課題」が明らかになっている段階です。
活力ある企業体であるためには、「問題」(あるべき姿と現実のギャップ)の把握と「課題」(ギャップ解消のための施策)の設定を全社員が自立的に行う必要があります。

例えば、自社商品の既存顧客からの注文が減少している場合、「既存顧客への営業強化」「新規顧客の開拓」「新商品の開発」などのさまざまな課題が考えられます。
問題をさらに掘り下げると「社員のモチベーション向上」などにも力を入れる必要があるかもしれません。

これらに優先順位をつけ、特定の課題に絞り込んだり、複数の課題を組み合わせたりして、「今何をするべきか」を明らかにするのが、見える化の第2ステップです。

<「問題と課題の見える化」の主な要件>

  • ・社長は全社の状態把握のために必要なさまざまな経営指標を入手し、経営判断に活用している
  • ・全社や各部門にとって何が問題かについての定義が明らかになっている
  • ・問題が起こったときには要因分析などで再発防止策を徹底している
  • ・社長・経営幹部・部門長など役職に応じた裁量範囲が明文化されている
  • ・部門目標・チーム目標・個人目標が明確になっていて、全メンバーが共有している
  • ・部門長は他部門の業績状況を把握し、必要に応じて提言を行っている

3.第3ステップは「進捗管理」の見える化

見える化の第3ステップは第2ステップで設定した「今すべきこと」について、実際にどの程度取り組みが進んでいるかを把握し、必要に応じて新たな手が打てるようにすること、つまり進捗管理ができている状態です。
例えば、「既存顧客への営業強化」というテーマに対しては、実際にどのような取り組みを行うのか、また、どのような状態になったら目標を達成したことになるのかについて明確にします。

<「進捗状況の見える化」の主な要件>

  • ・ビジョン・戦略に基づく重点分野について具体的な管理指標があり進捗管理されている
  • ・数値計画の進捗状況は少なくとも週次単位で集計され、幹部陣に共有されている
  • ・経営会議・部門会議など会議体系が整理され、適切に運用されている
  • ・報告・連絡・相談の基準が明確になっていて適切に運用されている
  • ・部門長はメンバーの定期報告から行動結果だけではなくプロセスを読み取っている
  • ・メンバー全員のスケジュールが共有されている

まとめ

業務の「見える化」は、規模が比較的小さく社員間の交流も多い中小企業では、すでにできていると思いがちです。しかし、実際には意外と十分には見える化できていないものです。今回紹介した3つのステップに沿って、業務を見える化していきましょう。

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柴田 孝樹 執筆者プロフィール:
ビジネス・ソリューション株式会社
代表取締役 柴田 孝樹
URL:http://www.business-sol.jp/

30年にわたり、経営の要となる業務改善・マーケティング・リスクマネジメントを主業務に、生産性向上の仕組みづくりを発信しております。

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