金融ユーザー会 第1回会合
ノーコードアプリ作成ツール
AppSuite活用法ディスカッション
後編

2025年10月、東京八重洲にて株式会社ネオジャパン主催の「金融ユーザー会 第1回会合」が開催されました。

本稿では、本会合に参加いただいた金融ユーザー会の会員企業様によるdesknet's NEOのノーコードアプリ作成機能である「AppSuite(アップスイート)」を使ったアプリ開発事例の紹介と、AppSuiteの活用法に関するディスカッションの模様をお届けします。なお今回事例を紹介いただいた会員企業は、以下の7社様となります。

  • 大阪信用金庫
  • 京都信用金庫
  • 山陰合同銀行
  • 多摩信用金庫
  • 北陸銀行
  • 宮崎銀行
  • 横浜信用金庫
  • (敬称略・五十音順)

本記事では、京都信用金庫様、横浜信用金庫様、山陰合同銀行様、大阪信用金庫様の事例を紹介いたします(残り3社様の事例については前編で紹介しています)。

紙台帳で行っていた郵便物送付先管理をAppSuiteでペーパーレス化

郵便物送付先管理アプリ 京都信用金庫様には、AppSuiteを使って内製開発した「郵便物送付先管理簿アプリ」をご紹介いただきました。金融機関が顧客に送付する郵便物の内容や宛先を間違ってしまうと、重大な情報漏えい事故につながりかねません。そのためどの金融機関でも郵便物の内容チェックには万全を期しており、「誰宛てに何を送ったか」「誰が送ったか」「誰がチェック作業を行ったか」などの情報をしっかり管理しています。

京都信用金庫様ではこれらの情報の管理を、かつては紙の台帳で行っていましたが、これをペーパーレス化して業務の効率や品質を向上させるために、AppSuiteを使って管理簿アプリを開発されました。送付担当者や内容をチェックする担当者が、作業を完了するたびにこのアプリに結果を登録することで、作業全体の進捗を可視化でき、かつ過去の履歴もすぐに辿れるようになったといいます。

この業務に課題を抱えている金融機関は多く、他の参加者からも「当金庫も今は紙で行っているので、ぜひ欲しいですね」(大阪信用金庫様)といった声が上がっていました。

なおAppSuiteのようなノーコードツールは、短期間でのシステム開発を可能にすることが大きな強みとされていますが、京都信用金庫様では現在、通常のシステム開発と同じく要件定義から始めて、工程ごとにしっかりドキュメントを残しながら開発を行っているといいます。京都信用金庫 システム部 平井様はこの点について、「せっかくノーコードツールを導入したのに、その最大の強みであるスピード感を生かしきれていないのではないかという思いを抱えています。もちろんドキュメントが重要なものであることは理解しています」と語ります。

この点については、他の参加者からもさまざまな意見が相次ぎました。

「当金庫ではプロトタイプをまず作り、それをユーザーに見せてフィードバックをもらいながら徐々に完成に近づけていく開発スタイルをとっています。こうしたプロセスを通じて、ユーザー側も当初気付けなかった要件を徐々に言語化できるようになってきます。その半面ドキュメントはほとんど残さないので、ノウハウが属人化してしまうという問題は確かに残ります」(多摩信用金庫様)

「当金庫では全社で使うアプリについては要件定義をきちんと行ってドキュメントも残しますが、部署内でのみ使うアプリについては、基本、各部署での作成と管理をお願いしています。しかし、システム部の関与が少ないため、アプリのブラックボックス化が発生する可能性があります。これを防ぐため、簡単な設計書などを作成してもらい、システム部が管理するAppSuite管理台帳に保存してもらっています。設計書が保存されるまで、部署内のアプリでも利用できないように制御しています」(大阪信用金庫様)

紙帳票のデザインイメージを引き継いだアプリ画面で業務効率アップ

横浜信用金庫様には、「実行依頼書アプリ」をご紹介いただきました。このアプリは、本部で融資関連の業務を行う「融資バックオフィスセンター」で実際に利用されているもので、アプリの開発作業はネオジャパンが行いました。

横浜信用金庫様ではもともと、営業店から本部に対する融資申請を、紙の実行依頼書を使って行っていました。これをペーパーレス化すべく、融資バックオフィスセンター様からネオジャパンに対してAppSuiteアプリの開発依頼をいただきました。

これを受けてネオジャパン側では、従来の実行依頼書に記載されている項目を画面から登録できるAppSuiteアプリを開発し、さらには融資の申請・実行業務のステータスを可視化できる「実行管理表アプリ」と連動させ、単なるペーパーレス化に留まらない「業務フロー全体のデジタル化」を実現しました。

横浜信用金庫 事務統括部 新津様は、このアプリを導入したことで得られた効果について次のように話します。

「営業店と本部の双方の担当者から『互いに同じものが見れるようになってとても便利になった』という声が届いています。またExcelとは異なり、複数の担当者が同時にデータを更新できる点もとても評判がいいですね。今では融資バックオフィスセンターのオフィス内に設置した大型モニターにこのアプリの画面を常時投影して、融資案件の進捗を誰もが簡単に把握できるようにしています」

なお同アプリの画面は、基となった紙の実行依頼書と同様に、各項目を罫線で区切ったデザインを採用しています。このように、紙の帳票のビジュアルイメージを継承した画面デザインについては、参加者からさまざまな意見が寄せられました。

「業務部門でAppSuiteアプリを開発してもらうと、元の書式デザインを踏襲した画面ができあがってくることがあります。最近ではこういった画面デザインの方が現場の方にとっては使いやすいのではないかと感じるアプリも登場してきております」(山陰合同銀行様)

「個人的には、どうしても印刷しなければいけないケースを除いては、そのようなデザインはあまり積極的には採用したくないのですが、『罫線があると項目の配置が自ずときれいに揃うため、作業効率が上がる』という意見も現場からは上がってきており、確かに一定のメリットはあるのだと思います」(北陸銀行様)

行内からの質問・問い合わせを受け付けるアプリ「照会くん」

山陰合同銀行様には、行内から寄せられる各種の質問や問い合わせを一手に受け付ける「照会くん」というAppSuiteアプリを紹介いただきました。このアプリの開発に至った背景について、同行 IT統括部 塚原様は次のように説明します。

「『業務について何か分からないことが出てきたとき、誰に質問すればいいか分からない』という声を以前から多く聞いており、これを解決するために照会くんを開発しました。ユーザーが画面から質問内容を記入し、質問のカテゴリを選択すると、アプリが担当者の名前をマスタから自動的に引っ張ってきて画面に表示すると同時に、その担当者にメールで質問内容を自動的に通知する仕組みになっています」

頻繁に寄せられる質問については、別途運用しているFAQアプリと連携して、質問と回答の内容を簡単にFAQに登録できるようにもなっています。加えて現在、一部の質問に対して生成AIが自動的に回答を生成する仕組みの実装も進めており、今後の本格運用に向けて検証を行っているところだといいます。

こうした問い合わせ対応やFAQの仕組みについては、他の金融機関様でも同様の課題を抱えておられるようで、参加者から多くの質問や意見が寄せられました。

「私もよく『誰に聞いたらいいか分からないけど、とりあえずあなたに電話してみた』という問い合わせを受けて、業務がしょっちゅう中断させられるので、このような仕組みには大変興味があります」(横浜信用金庫様)

「当金庫のFAQは、電子会議室を活用しています。よって、過去の問い合わせと対応が、電子会議室に蓄積されています。文書管理機能に蓄積されたドキュメントは、neoAIさんの生成AI機能を使って分析できるようになると聞いています。電子会議室についても、生成AIの分析対象としていただけると、営業店の質問に対する回答が迅速になるため、ぜひ使えるようしていただけるとありがたいです」(大阪信用金庫様)

なお山陰合同銀行 森山様からは、「同行内で最も複雑なAppSuiteアプリ」の開発エピソードを紹介していただきました。

「住宅ローンの審査フローを、desknet’s NEOのワークフロー機能を使わずにAppSuiteの機能だけで開発したのですが、複雑な審査フローをAppSuiteの自動処理設定で設計・開発し、結果的に設定した自動処理設定は200を超え、紐づけた関連アプリも10アプリを超える巨大なアプリとなりました」

AppSuiteの開発経験がある参加者からは、この開発エピソードに対する驚きの声が多数上がっていました。

各種マスタデータベースを用意し、各アプリの運用を効率化

最後に大阪信用金庫様から、「顧客DB」「情報ノート」「融資関係処理未済管理簿」という3つのアプリを紹介していただきました。顧客DBはマスタデータベースとして、他のアプリにて顧客番号を入力すると、氏名・住所を自動表示させるために使用しています。これ以外にも大阪信用金庫様では「職員DB」「支店DB」など、さまざまなマスタデータベースを用意し、各アプリから参照することで、運用を効率化されています。

他の参加者からは、AppSuiteでこのようなデータベースを保持することについて、「データベースの管理はどのように行っているのですか?」(横浜信用金庫様)、「処理が重くなるようなことはないのですか?」(京都信用金庫様)など、さまざまな質問が飛びました。

大阪信用金庫様では、各部署でアプリ開発をしています。ただし、金庫全体で使われるアプリについては、システム部門が関与し、営業店の負担が少ないようなアプリになるよう助言をしています。部署内に閉じて利用されるアプリについては、システム部の関与はなく、各部署で自由に開発するという方針をとっています。ただし同社 システム部 村田様によれば、自由にアプリ開発をすると、コントロールができなくなるため、ある程度の全体指針やルールを定めているといいます。

その具体的な考え方については、「ブラックボックスにならないように、アプリ作成の経緯を明確にし、設計ドキュメントを残す。入力項目をなるべく減らす。ブラウザの縦スクロールが少ない画面レイアウトを心掛ける。ワークフロー機能は、無駄な承認やフローがあると営業店の負担に繋がるため、本当にワークフローまで必要な業務なのか?も含め、業務フローを精査したうえで、アプリ開発をする。」といったものがあり、こうしたルール設計により、現場の自由度を確保しながらも、全体最適を崩さない運用を実現しています。